空想その①
街路樹のお喋り
「寒いねー、今日は特に寒いや」
「ああ・・・またちらほら雪が落ちてきたね」
「おや?誰かこの雪の道を歩いてくるよ?」
「積もった雪に隠れて、毛糸の帽子が消えたり見えたり」
「肩かけかばん・・・ぱんぱんに膨らんでいるよ」
「おつかいかな?真っ赤なほっぺたに、白い息はいて」
「ざくざく道だし」
「つるつる道だし」
「せめてあの子に落ちる雪だけなんとかならないかな」
「よし。ボクが枝をのばして、傘になってあげよう」
ばさっ
「あ・・・」
「かわいそうに、あんなに、雪をかぶってしまって!」
「いや、傘になろうと・・・」
「こちらを見上げたよ」
「いっぱい涙ためてる」
・・春になったら、ボクは枝にたくさんの葉っぱをたくわえよう。そして、柔らかな木陰を作ってあげるんだ。
そしてきっとボク、あの子のほっぺたを笑顔にしてあげるんだ。